はじめに
「資産形成やお金の制度って、なんだか難しそう…」
「年金のことは考えた方がいいって言うけれど、専門用語ばかりでよくわからない」
保育士として毎日お忙しく働いている皆さん、こんな風に感じていませんか?
確かに、お金の制度は複雑で理解するのが大変ですよね。でも実は、仕組みを正しく理解すると、
手取りが増える可能性もあるんです。
特に「はぐくみ企業年金」という制度は、知っているかどうかで将来のお金に大きな差が生まれることも。
今回は、お金の制度に詳しくない保育士さんでもわかりやすく、はぐくみ企業年金の基本をご紹介します。
「そもそも、はぐくみ企業年金って何?」

さきさん:「のすけさん、私が勤めている保育園で『はぐくみ企業年金』って制度の話が出てるんですけど、正直よくわからなくて…」



のすけ:「さきさん、それは大切な制度ですね。ただし、これは私立の保育園や企業が導入している制度なので、公立保育園の保育士さんには関係のない話になります。簡単に言うと、お給料の一部を『未来のお弁当箱』に入れて、将来取り出せるようにする仕組みなんです」



さきさん:「未来のお弁当箱?」



のすけ:「今のご飯(お給料)を少しずつその箱に詰めて、60歳以降にまとめて食べられる(受け取れる)んです。しかも、お弁当箱に入れる時に税金で割引がついてくるんですよ」
はぐくみ企業年金とは?制度の基本
はぐくみ企業年金は、企業型確定拠出年金(企業型DC)の一種です。具体的には以下のような特徴があります:
基本的な仕組み
- 給与天引き方式:毎月のお給料から一定額が自動的に積み立てられる
- 税制優遇:積み立てた金額が所得控除の対象になる
- 積立投資:積み立てたお金を投資信託などで運用できる
- 会社が導入している場合のみ:勤務先が制度を導入していることが前提
税制優遇の仕組み
積み立てた掛金は「所得控除」の対象となるため:
- 所得税が軽減される
- 住民税が軽減される
- 社会保険料の算定基礎からも除外される
つまり、「給与が減ったように見えて、実は手取りが増える」という現象が起こる可能性があります。
シミュレーション:実際にどれくらい得になる?
前提条件
- 年収300万円の保育士さん
- 月1万円(年12万円)をはぐくみ企業年金に積立
- 所得税率5%、住民税率10%、社会保険料率約15%で計算
比較表
項目 | 加入前 | 加入後 | 差額 |
---|---|---|---|
年収 | 300万円 | 300万円 | – |
企業年金掛金 | 0円 | 12万円 | -12万円 |
課税所得 | 300万円 | 288万円 | -12万円 |
所得税 | 約6,000円 | 約5,400円 | -600円 |
住民税 | 約12,000円 | 約10,800円 | -1,200円 |
社会保険料 | 約18,000円 | 約16,200円 | -1,800円 |
実質負担額 | 12万円 | 約8.6万円 | 約3.4万円軽減 |
つまり、12万円積み立てても、実質的な手出しは約8.6万円。約3.4万円分の節税効果が得られる計算です。
「手取りって減るの?増えるの?」



さきさん:「でも結局、お給料から天引きされるんですよね?手取りは減っちゃうんじゃないですか?」



のすけ:「それが面白いところなんです。確かに天引きされる分は減りますが、税金や社会保険料も一緒に安くなるので、思ったほど手取りは減らないんです」



さきさん:「え、そうなんですか?」



のすけ:「先ほどの例だと、月1万円積み立てても、実際の手取り減少は月約7,200円程度。つまり約2,800円分は税金などの軽減でカバーされるんです」
メリットとデメリットを比較
メリット
- 節税効果:所得税・住民税・社会保険料の軽減
- 老後資金準備:将来に向けた計画的な資産形成
- 続けやすさ:給与天引きで自動積立
- 運用益非課税:投資で得た利益に税金がかからない
- 受取時優遇:年金受給時も税制優遇あり
デメリット
- 流動性の低さ:原則60歳まで引き出せない
- 会社依存:勤務先が制度導入していないと利用不可
- 転職時の手続き:転職先に制度がない場合は個人型に移換が必要
- 元本割れリスク:運用次第では積立額を下回る可能性
- 制度変更リスク:法改正により条件が変わる可能性
「私は入った方がいい?」



さきさん:「メリットもデメリットもあるんですね。私の場合、入った方がいいのかな?」



のすけ:「それは個人の状況によりますね。まず、さきさんは今の職場で長く働く予定ですか?」



さきさん:「はい、この保育園は働きやすくて、できれば定年まで続けたいと思ってます」



のすけ:「それなら検討の価値がありそうですね。ただし、60歳まで引き出せないので、その間に大きなお金が必要になる予定があるかも考えてみてください」
入った方がよさそうな人/そうでない人
入った方がよさそうな人
- 長期勤務予定:現在の職場で安定して働く予定
- 節税メリットを受けたい:ある程度の所得がある
- 老後資金が心配:将来への備えを考えている
- 貯金が苦手:自動積立で続けたい
- 投資に関心がある:運用で資産を増やしたい
向かない人
- 転職が多い:頻繁に職場を変える予定
- 短期的にお金が必要:住宅購入や教育費など大きな支出予定
- 現在の生活で手一杯:月々の積立が家計を圧迫する
- 60歳前の早期退職予定:定年前にリタイアしたい
- 投資が不安:元本割れリスクを受け入れられない
重要な注意点
制度の詳細や税制優遇の内容は、以下の要因によって異なります:
- 勤務先の制度内容:会社によって掛金上限や運用商品が違う
- 個人の所得状況:年収や扶養の状況で節税効果が変わる
- 法改正:税制や制度は変更される可能性がある
- 転職時の取扱い:転職先の制度によって継続方法が変わる
※本記事は制度の一般的な解説であり、加入を推奨するものではありません。実際の利用にあたっては、必ず勤務先の人事担当者や専門家(ファイナンシャルプランナー、税理士など)にご相談ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「資産形成=難しい話」と思いがちですが、はぐくみ企業年金は、実は知るだけで手取りが変わる可能性がある制度です。保育士として働く皆さんにとっても、決して遠い話ではありません。
大切なのは:
- 制度の基本を理解する
- 自分の状況と照らし合わせる
- 専門家や職場に相談する
まずは仕組みを知り、「自分にとって必要かどうか」を冷静に判断してみましょう。将来の安心のために、今できることから始めてみてはいかがでしょうか。
保育士の皆さんが、お金の心配をせずに子どもたちのために働き続けられる。そんな環境づくりの一助になれば幸いです。
コメント