結論
★切り替えが苦手な子は、脳の発達段階として「今」を手放すのが難しい時期にいる。
★声かけを変えるより先に、時間・空間・道具の配置を整えるだけで、抵抗が半減する。
★「いつ終わるか」が見えて、「次も悪くない」と思える設計が、切り替えを自然にする。
なぜ「そろそろご飯だよ」が通じないのか──行動科学の視点
子どもが遊びに夢中なとき、脳の中では「楽しい」という感情が全開になっています。このとき、大人が「もうすぐご飯だから」と声をかけても、子どもの意識は「今の楽しさ」に集中しているため、未来の予定まで意識が届きません。
これは、実行機能と呼ばれる脳の働きがまだ発達途中だから。実行機能とは、目標に向かって行動を計画し、不要な行動を抑制し、状況に応じて切り替える力のことです。この力は10代半ばまでゆっくりと育っていくため、幼児期や小学校低学年の子どもは、そもそも「今やっていることを止めて、次に移る」のが難しいのです。
さらに、切り替えには「心の準備」が必要です。突然「はい、終わり!」と言われると、大人でも「え、まだ途中なのに」となりますよね。子どもはその感覚がさらに強く、準備なしに楽しみを奪われると、怒りや悲しみが爆発してしまいます。
つまり、「言うことを聞かない」のではなく、脳の仕組み上、切り替えに摩擦が生じている状態なのです。

切り替えをスムーズにする環境デザインチェックリスト
環境を整えるだけで、声かけの負担が減り、子どもも自然に動きやすくなります。
時間の見える化
- アナログ時計や視覚タイマーを、子どもの目線に設置しているか
- 砂時計など、時間が減っていく様子が見えるツールを使っているか
- 「長い針が6になったら」など、具体的な目印を示しているか
空間の区切り
- 遊びのスペースと食事スペースが明確に分かれているか
- 片付けボックスが、子どもの手の届く位置にあるか
- 次の活動の準備(食卓、お風呂セットなど)が見えているか
予告の二段階設計
- 第一予告(10分前など)と第二予告(3分前など)のタイミングを決めているか
- タイマーをセットする時間を、生活リズムに組み込んでいるか
- 子どもが予告を「聞いた」ことを確認する仕組みがあるか
次の活動への動線
- 片付け後に「次は何をするか」が明確に分かるか
- 次の活動に、子どもが楽しみを感じられる要素があるか
- 移動距離や手順が、子どもにとって負担なく設計されているか
仕組み化テンプレート──どの家庭でも応用できる3つの柱
1. 固定ルーティン
毎日同じ流れを繰り返すことで、子どもの体内時計が整い、予告がなくても動けるようになります。
- おやつ → 遊び → タイマー5分前 → 片付け → ご飯
- お風呂 → パジャマ → 絵本 → 歯磨き → 就寝
時間は多少ずれても構いません。「順番」が安定しているだけで、子どもは見通しを持てるようになります。
2. 可視化ツール
言葉だけでは忘れてしまう子には、視覚的な手がかりが効果的です。
- タイマー(数字が見えるもの、音が鳴るもの)
- 絵カード(今日の流れを並べる)
- 写真(「ここまで作ったら写真撮ろう」など、作品を保存する約束)
道具を使うことで、親が繰り返し言わなくても、子ども自身が時間や流れを確認できます。
3. 家庭内ロール分担
「誰が何をするか」を決めておくと、切り替えの負担が分散されます。
- タイマーをセットするのは誰か
- 片付けを一緒にするのは誰か
- 次の活動の準備をするのは誰か
たとえば、「パパがタイマーをセットして、ママが片付けを手伝う」など、役割を明確にすることで、親の連携もスムーズになります。
よくある失敗 → 改善ポイント
NG:予告が曖昧
「もうすぐご飯だから」「そろそろ片付けて」
改善:時間を数値で示す
「あと10分でご飯だよ」「タイマーが鳴ったら片付けね」
NG:タイマーが子どもの視界に入らない
リビングの隅や、親のスマホの中だけにタイマーがある。
改善:子どもの目線に配置
遊んでいる場所のすぐ近くに、視覚タイマーや時計を置く。
NG:次の活動が見えない
片付けた後、何をするのか子どもが分からない。
改善:次の準備を見せる
食卓にお皿を並べておく、お風呂のおもちゃを用意しておくなど、次の活動が具体的に見えるようにする。
NG:毎回延長してしまう
「あと5分」が何度も続き、結局ずるずると時間が伸びる。
改善:延長は「今日だけ特別」と明言
毎日延長すると、「ごねれば通る」学習が強化されます。延長するなら、「今日は特別ね。明日は終わりの時間を守ろうね」と線引きをします。
個々の特性による設定値調整
同じ環境設計でも、子どもの特性によって微調整が必要です。
感覚過敏がある子
- タイマーの音が大きすぎないか確認
- 視覚タイマーのライトが眩しくないか確認
- 予告は段階的に、急な変化を避ける
疲れやすい子
- 遊びの時間そのものを短めに設定
- 切り替えのタイミングを、疲れる前に設定
- 片付けを一緒にやり、負担を減らす
こだわりが強い子
- 「ここまで作ったら写真撮ろう」など、完成の区切りを明確に
- 作品を保管する場所を決めておき、「続きは明日」の保証をする
- 毎日同じ流れを繰り返し、ルーティン化する
集中しすぎる子
- 予告だけでは気づかないことが多いため、肩に手を置くなど物理的に注意を引く
- タイマーを視界に入れ、音+視覚で伝える
- 一緒に片付けることで、行動の切り替えをサポート
5分スターター──今日すぐできる最小の一歩
- タイマーを1つ用意する(100円ショップの砂時計でもOK)
- 「片付けの10分前」にタイマーをセットすることを、今日から始める
- 次の活動の準備(食卓を並べる、お風呂のおもちゃを用意するなど)を、片付け前にしておく
- 子どもと一緒に「何分で終わりにするか」を決める時間を作る
- 切り替えができた日は、「できたね」と短く認める
完璧を目指す必要はありません。1つでも試してみて、「これはうちに合いそう」と思えるものを続けてみてください。
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この記事では、切り替えをスムーズにする「環境設計」の考え方をお伝えしました。
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