【結論】
- 問題の本質: 子どもは”感情の急ブレーキ”がまだ機能しておらず、怒りが体を通じて物へ向かう
- 今日できること: 爆発する”前の環境”と”後の動線”を整えるだけで、行動は変わり始める
- 得られる変化: 叱る回数が減り、子どもが自分で立ち直れるようになる
なぜ「物に当たる」は止められないのか?—行動科学で見る”摩擦ゼロの暴走”
子どもがコントローラーを壁に投げつける瞬間、脳の中では何が起きているのでしょうか?
怒りという感情は、理性より先に体を動かします。
脳科学では、感情を生む「扁桃体」が興奮すると、理性を司る「前頭前野」のブレーキが効かなくなることが分かっています。つまり、
- 「やめよう」と思う前に、手が動く
- 「まずい」と気づいたときには、もう投げている
これは意志の弱さではなく、脳の発達段階による生理現象です。
さらに、物を投げる・叩くという行動は、体の中に溜まったエネルギーを瞬時に放出できる”最短ルート”。
つまり、子どもにとっては摩擦がゼロなんです。
逆に言えば、適切な”摩擦”を設計することで、行動は変えられるということ。

環境デザイン:爆発を防ぐ「物理的な仕掛け」チェックリスト
行動を変えるには、まず環境を変えることから。
以下のチェックリストで、今の環境を見直してみてください。
【ゲーム環境の摩擦設計】
- ☐ ゲーム機の周囲1メートル以内に、投げられるもの・壊れやすいものがない
- ☐ 壁の近くにクッションや柔らかいマットが置いてある
- ☐ コントローラーの近くに「叩いてOKなもの」(クッション・新聞紙など)が常備されている
- ☐ ゲーム画面の近くに「爆発サイン表」が貼ってある(舌打ち、肩が上がる、など)
- ☐ 子どもが「ヤバい」と思ったときに逃げ込める場所(クールダウンスペース)が家にある
【時間・動線の摩擦設計】
- ☐ ゲーム前に「今日は何回まで?」「負けたらどうする?」を確認する習慣がある
- ☐ ゲーム時間にタイマーを使い、「時間が決める」仕組みにしている
- ☐ 負けた直後に「次の行動」が自動的に始まる導線がある(おやつ、トイレ、外遊びなど)
環境を整えるだけで、叱る回数が減り、子ども自身も楽になります。

仕組み化テンプレ:どの家庭でも使える3つの基本設計
環境が整ったら、次は「仕組み」を作ります。
【1】固定ルーティン(時間と流れのパターン化)
ゲームの前後に、必ず同じ流れを作る。
例:
- ゲーム前 → 「何回やる?」を決める → タイマーセット
- ゲーム中 → 「イライラサイン」が出たら声かけ
- ゲーム後 → 深呼吸3回 → 水を飲む → 終了
この流れを毎回同じにすることで、脳が「これをやればいいんだ」と学習します。
【2】可視化ツール(見える化で脳の負担を減らす)
言葉だけで伝えても、感情が高ぶった子どもには届きません。
視覚で分かる仕組みを作りましょう。
- タイマー: 音と視覚で「時間」を知らせる
- イライラカード: 「今どれくらい怒ってる?」を顔マークで示す
- 写真付き手順表: 「負けたらこうする」を写真で貼る
子どもは「次に何をすればいいか」が分かると、パニックが減ります。
【3】家庭内ロール分担(誰が何をするか)
「ママが全部やる」は続きません。
家族で役割を分けることで、負担が減り、一貫性が生まれます。
例:
- ママ: ゲーム前の確認、クールダウン時の見守り
- パパ: 爆発後の環境リセット(壊れたものの片付け)、週末の振り返り
- きょうだい: クールダウンスペースに誘導する(年齢が上なら)
誰が・いつ・何をするかを明確にすると、支援がブレません。
よくある失敗 → 改善ポイント(環境設計の視点で)
良かれと思ってやったことが、実は逆効果…ということもあります。
❌ NG:爆発した後に「なんでやったの!?」と問い詰める
なぜダメか:
感情が高ぶっている最中は、脳が「戦闘モード」。言葉が入らないどころか、追い詰められてさらに爆発します。
✅ 改善ポイント:
距離をとる動線を作る。「ちょっと一人になろうか」と、クールダウンスペースへ誘導する仕組みを事前に作っておく。
❌ NG:「ゲーム禁止!」と取り上げる
なぜダメか:
罰を与えても、感情コントロールのスキルは育ちません。むしろ、親子関係が悪化し、隠れてやるようになります。
✅ 改善ポイント:
「どうしたら楽しく遊べるか?」を一緒に考える場を作る。週に1回、10分でいいので「ゲーム会議」を設定する。
❌ NG:クールダウンスペースに「反省しなさい!」と送り込む
なぜダメか:
「罰の場所」になると、子どもは行きたがりません。むしろ、逃げ場を失います。
✅ 改善ポイント:
クールダウンスペースを「安心できる場所」に設計する。好きなぬいぐるみ、クッション、音楽など、落ち着けるアイテムを置く。
個々の特性による”設定値”調整
同じ「物に当たる」でも、子どものタイプによって必要な環境設定は変わります。
【感覚過敏が強い子】
- 音に敏感: ゲーム音量を下げる、イヤホンを使う
- 視覚刺激に弱い: 画面の明るさ調整、部屋の照明を落とす
- 触覚敏感: コントローラーの握り心地を確認、滑り止めシートを貼る
【こだわりが強い子(ASD傾向)】
- 予測外に弱い: 「負けるかも」を事前に予告する
- ルーティンが安心: 毎回同じ流れ、同じ場所でゲームをする
- 視覚的手順が有効: 写真やイラストで「次にやること」を示す
【衝動性が高い子(ADHD傾向)】
- 体を動かす発散が必須: クッション叩く、ジャンプする場所を作る
- 短時間目標: 「今日は1回だけ我慢」など、達成しやすい設定
- 即時フィードバック: できた瞬間に「今できたね!」と認める

5分スターター:今日すぐできる最小の一歩
全部やらなくて大丈夫。まずは1つだけ試してみてください。
- ゲーム機の周囲1メートルを片付ける(壊れやすいものを移動)
- クッションを1つ、ゲーム画面の横に置く(叩いてOKなものを準備)
- 「イライラサイン」を子どもと一緒に3つ書き出す(紙に書いて貼る)
- タイマーを1つ用意する(スマホのタイマーでOK)
- 週末10分、「ゲーム会議」の時間を作る(どうしたら楽しく遊べるか話す)
まとめ:仕組みが変われば、行動は変わる
子どもが物に当たってしまうのは、性格の問題でも、しつけの問題でもありません。
環境と仕組みの問題です。
- 爆発する前の「サイン」を見える化する
- 爆発したときの「逃げ場」を作る
- 爆発した後の「動線」を設計する
この3つを整えるだけで、子どもは少しずつ変わっていきます。
そして、何よりあなた自身が楽になります。
叱る回数が減り、見守る余裕が生まれ、子どもとの時間が穏やかになっていく。
それが、仕組みづくりの力です。
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あなたの「子どもを理解したい」という気持ちが、一番の支援です。
焦らず、一緒に歩いていきましょう。
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