結論3行
・問題の本質は「完璧主義×不器用さ」が重なったとき、朝の時間制約という環境が摩擦を生んでいること。
・今日できる最小アクションは、靴紐を結ぶ「場所・時間・道具」のどれか一つを変えること。
・それだけで、親子の朝が驚くほど穏やかになる可能性があります。
なぜ「頑張れ」では解決しないのか
玄関で靴紐を何度も結び直す。左右の対称性が気になって先に進めない。こうした行動は、一見すると「こだわりが強い」「時間の感覚がない」と映ります。
でも、行動科学の視点で見ると、話は少し違います。
人間の行動は「きっかけ→行動→結果」という流れで成立します。この中で「行動」そのものに摩擦が多いと、どれだけ本人が頑張っても、スムーズには進みません。
靴紐を結ぶという行為には、次のような摩擦が潜んでいます。
- 手指の協調運動(複数の動きを同時にコントロール)
- 視覚情報の処理(左右のバランスを確認)
- 実行機能(完璧を手放して次に進む判断)
- 時間的プレッシャー(朝は待ってくれない)
これらが重なると、脳の処理能力はパンク寸前。「頑張れ」という精神論ではなく、「どこの摩擦を減らすか」という設計の問題なのです。

環境デザイン:摩擦を下げるチェックリスト
行動の前後を整えることで、本人の負担は劇的に変わります。
物理的環境の調整
- □ 靴紐の素材を変える(ツルツル→ザラザラ、または逆)
- □ 紐の長さを子どもの手のサイズに合わせる
- □ 玄関の照明を明るくする(視覚情報が取りやすくなる)
- □ 座って結べる椅子やベンチを玄関に置く
- □ 余計な視覚刺激(おもちゃ、ポスターなど)を減らす
前後動線の設計
- □ 靴を履く場所を固定する(毎回同じ場所で行う)
- □ 前日夜に靴紐を調整しておく
- □ 朝は「仮結び」、帰宅後に「本結び」と時間を分ける
- □ 出発の10分前にアラームを設定し、予告する
- □ 靴紐の次の動作(ドアを開ける、靴箱を閉めるなど)を明確にする
感覚刺激の調整
- □ きつすぎない紐の締め具合を本人と確認しておく
- □ 靴下の素材や厚みを変えてみる
- □ 靴のサイズが適切か(小さすぎる・大きすぎる)を見直す
仕組み化テンプレート
どんなテーマにも応用できる「行動を支える3つの柱」です。
1. 固定ルーティン
時間・流れをパターン化することで、脳の負担を減らします。
- 朝7:20になったら玄関へ
- 玄関の椅子に座る
- 靴を履く
- 紐は「交差→引っ張る→おしまい」の3ステップのみ
- 結び直しは1回まで
このように「いつ・どこで・何を・どこまで」を固定すると、毎回考える必要がなくなります。
2. 可視化ツール
見えないものを見える形にすることで、見通しが立ちます。
- タイマー(3分だけチャレンジ、と終わりを明示)
- 手順カード(イラストで3ステップを提示)
- 完璧ラインの写真(「これでOK」の基準を前日に撮影)
- カレンダー(朝は仮結び、週末は本結び、と書き込む)
3. 家庭内ロール分担
誰が何をするか、事前に決めておく設計です。
- 親:前日夜に紐の調整、朝の予告アラーム
- 子:自分で靴を履く、結び直しは1回まで
- きょうだい:玄関で待つ役(プレッシャーを減らすため離れる)
よくある失敗 → 改善ポイント
環境設計の視点で、つまずきやすいパターンを整理します。
NG:毎朝その場で「早く」と急かす
→ OK:前日に「明日は7:25に出るよ」と予告し、タイマーで時間を可視化
時間のプレッシャーは、完璧主義を強化します。予告と可視化で、心の準備を作ります。
NG:親が横で見守り続ける
→ OK:タイマーをセットして、その場を一度離れる
見られているプレッシャーが、かえって動きを固くします。「3分経ったら声かけるね」と伝えて距離を取る方が、結果的にスムーズです。
NG:いつも同じ紐靴を使う
→ OK:朝用・休日用で靴を使い分ける
朝はマジックテープやゴム紐、休日は紐靴で練習。環境によって道具を変える設計です。
NG:完璧に結べるまで待つ
→ OK:「今日はこれでOK」の基準を事前に決めておく
完璧の基準が曖昧だと、いつまでも終われません。写真や手順カードで「ここまででOK」を明示します。
個々の特性による”設定値”調整
子どもの特性を、環境パラメータとして扱います。
感覚過敏が強い場合
調整ポイント:
- 紐の素材を変える(綿、シリコン、ゴムなど複数試す)
- 圧迫感の少ないゆるめの調整
- 靴下の縫い目の位置を確認
- どうしても無理なら、紐なし靴も選択肢
こだわりが強い場合
調整ポイント:
- 「完璧ライン」を写真で固定化
- 朝と夜で「目標値」を変える設計
- 予告を前日から行う
- ルールを明文化(結び直しは1回まで、など)
疲れやすさ・集中の短さがある場合
調整ポイント:
- 座って結べる環境(椅子を置く)
- 手順を3ステップ以下に簡略化
- タイマーで区切る(3分チャレンジ)
- 余計な視覚・聴覚刺激を減らす
不器用さが目立つ場合
調整ポイント:
- 紐を短くカットして調整
- イアン結びなど、簡単な結び方に変更
- 夜の練習タイムを確保
- ゴム紐への変更も視野に
5分スターター:今日すぐできる最小の一歩
読者が今日から試せる、小さなアクションです。
- 靴紐の長さを測り、5cm短くカットしてみる
- 玄関に小さな椅子を一つ置く
- 前日夜に靴を履いて、紐を調整しておく
- スマホで「完璧な靴紐」を写真に撮り、玄関に貼る
- 100円ショップで、違う素材の靴紐を1つ買ってみる
どれか一つ、試してみてください。
変化は小さくても、その積み重ねが、やがて朝の空気を変えていきます。
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今日も一日、お疲れさまでした。
あなたの「何か変えてみよう」という気持ちが、明日の朝を少しだけ穏やかにしてくれるはずです。
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