「金魚さわりたい!」が止まらない子ども――衝動を環境でコントロールする3つの仕組みづくり

金魚 触りたい 子ども, 衝動性 子ども 対応, 実行機能 環境調整, 触っちゃダメ 止まらない, 感覚探求 子ども, 発達支援 環境設定
目次

結論

★「触っちゃダメ」と何度言っても手が伸びるのは、意志の弱さではなく環境設計の問題です。

★今日できる最小アクション:水槽の位置を変える、触る前の動線に”ワンクッション”を置く。

★得られる変化:叱る回数が減り、子どもが自分で行動を選べるようになります。


なぜ「わかっているのに止められない」のか―行動科学の視点

子どもが「触っちゃダメ」と理解していても手を伸ばしてしまうのは、脳の仕組み上、ごく自然なことです。

幼児期の脳は、目の前の刺激に強く引っ張られる構造になっています。これを「実行機能の未熟さ」と呼びます。実行機能とは、衝動を抑えたり、計画を立てたりする脳の働きのこと。大人でも疲れているとつい余計なものを買ってしまうように、子どもは常にこの状態にあるのです。

ここで大切なのは、「我慢させる」のではなく「我慢しなくていい環境」をつくることです。

行動科学では、人の行動は「動機×能力×きっかけ」で決まるとされています。どれだけ「触るな」と伝えても(動機)、目の前に刺激がある限り(きっかけ)、衝動は発動します。だからこそ、物理的な環境を変えることが最も効果的なのです。

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環境デザインチェックリスト―摩擦を下げる5つの視点

子どもが「触らない選択」をしやすくするために、以下の視点で環境を見直してみましょう。

物理的配置

  • 水槽は手の届かない高さに設置されているか
  • 踏み台や椅子が近くにないか
  • 水槽の前に立つまでの動線に”ワンクッション”があるか(例:ゲート、マット)

視覚的リマインダー

  • 水槽の横に「見るだけ」のイラストやシールが貼られているか
  • ルールが一目でわかる視覚支援ツールがあるか
  • タイマーや時計など、時間の見える化ができているか

代替刺激の用意

  • 触りたい欲求を満たせる場所が別に用意されているか(お風呂、水遊びコーナー)
  • 手に持てる感触グッズ(スクイーズ、布など)が近くにあるか

前後の動線設計

  • 水槽を見る前に「約束の確認」をするタイミングがあるか
  • 見終わった後の次の行動が決まっているか(見たら手を洗う、おやつを食べるなど)

時間帯・状態への配慮

  • 疲れている時間帯、空腹時を避けているか
  • 刺激が多い環境(騒がしい、人が多い)を避けているか

仕組み化テンプレート―ルーティンで行動を固定する

環境を整えたら、次は「流れ」を固定します。毎回同じパターンにすることで、子どもは予測でき、衝動をコントロールしやすくなります。

固定ルーティンの例

  1. 水槽を見る時間を決める(例:朝ごはんの後、寝る前)
  2. 見る前に必ず「約束タイム」を設ける(5秒でOK)
  3. タイマーをセットして見る(3分など短時間)
  4. 終わったら次の行動へ移行(手を洗う、絵本を読むなど)

可視化ツールの活用

  • タイマー:見る時間の終わりを視覚化
  • カード:「見る」「触らない」のイラストカード
  • 予告写真:次の行動の写真を見せて切り替えをスムーズに
  • シールカード:触らずに見られた日にシールを貼る

家庭内ロール分担

  • 誰が約束の確認をするか
  • 誰がタイマーをセットするか
  • 誰が次の行動へ誘導するか

役割を決めておくことで、家族全員が一貫した対応をしやすくなります。


よくある失敗 → 改善ポイント

環境設計でよくあるつまずきと、その改善策をご紹介します。

NG:水槽をリビングの低い位置に置いたまま

理由:目線の高さにあると、刺激が強すぎて衝動が抑えられません。

OK:水槽を高い位置に移動する、または透明なアクリル板で物理的に距離をつくる。

NG:「ダメ」と言うだけで環境は変えない

理由:言葉だけでは、脳の仕組み上、衝動は止まりません。

OK:環境を変える、物理的に触れない状況をつくる。

NG:毎回違うタイミング、違う声かけで対応

理由:パターンが固定されていないと、子どもは予測できず不安定になります。

OK:同じ流れ、同じタイミングでルーティン化する。

NG:代替刺激を用意していない

理由:欲求を禁止するだけでは、別の場面で爆発します。

OK:触れる体験を別の場所・時間に組み込む。

NG:疲れているときも同じように対応

理由:疲労時は実行機能が低下し、衝動が抑えられなくなります。

OK:疲れているときは水槽を見ない、または短時間にする。


特性による”設定値”調整―子どもに合わせた環境パラメータ

すべての子どもに同じ環境が合うわけではありません。特性に応じて、環境の「強度」を調整しましょう。

感覚探求型の子ども

触覚刺激を強く求めるタイプ。我慢ではなく、代替刺激を豊富に用意することが最優先です。

  • 水遊び、粘土、スクイーズなど触れる体験を日常に組み込む
  • 水槽を見る前に、手を使う遊びで欲求を満たしておく

衝動性が高い子ども

目の前の刺激に瞬時に反応してしまうタイプ。物理的な距離と、視覚的リマインダーが有効です。

  • 水槽を完全に手の届かない高さに設置
  • 水槽の前に立つまでの動線を長くする(例:ゲートを設置)

ASD傾向がある子ども

ルーチンや視覚情報に強いタイプ。パターン化と視覚支援が効果的です。

  • 毎日同じ時間、同じ手順で見る
  • イラストカードで「見る」「触らない」を明確化

疲れやすい子ども

エネルギー量が少なく、すぐに実行機能が低下するタイプ。タイミングと時間の調整が重要です。

  • 疲れる前の時間帯に見る
  • 短時間(1〜2分)に設定

5分スターターキット――今日できる最小の一歩

環境設計は大がかりに思えますが、小さな一歩から始められます。以下のうち、ひとつだけ選んで試してみてください。

  1. 水槽の位置を10cm高くする
  2. 水槽の横に「見るだけ」のシールを貼る
  3. タイマーを用意して、3分だけ見る練習をする
  4. お風呂に魚のおもちゃを浮かべる
  5. 見る前に「手はポケットね」と具体的に伝える

完璧を目指さなくて大丈夫。ひとつ変えるだけで、確実に何かが動き始めます。


まとめ―環境を変えれば、叱る回数が減る

「触っちゃダメ」と繰り返す日々は、保護者にとっても子どもにとってもつらいものです。でも、それは誰かが悪いわけではありません。環境が整っていないだけなのです。

物理的な配置を変える、ルーティンを固定する、代替刺激を用意する。この3つを意識するだけで、衝動は格段にコントロールしやすくなります。

子どもの行動を変えようとするのではなく、環境を変える。それが、行動科学が教えてくれる最もシンプルで効果的な方法です。


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この記事を書いた人

こんにちは、ゆうたまと申します。
長野県出身で、現在は放課後等デイサービスの児童発達支援管理責任者・管理者として、子どもたちの支援に携わっています。
また、週に一度は幼児向け運動教室を主宰し、発達に合わせた運動あそびを通して「できた!」「楽しい!」を引き出す活動をしています。

ブログでは、
「子どもへの関わり方」「運動あそびの工夫」「支援のアイデア」など、
保育士さんや放デイ職員、保護者の方に役立つ実践的な内容を中心に発信しています。

資格は、保育士・幼稚園教諭Ⅱ種・NESTAキッズコーディネーショントレーナー・かけっこアドバイザー・児童発達支援管理責任者など。
専門的な知識だけでなく、日々の現場で感じた気づきを丁寧に言葉にすることを大切にしています。

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